射出成形金型における不良「 ゲート残り」の原因と対策方法
射出成形は、溶かしたプラスチックを金型に流し込んで固めることで、様々な形状の製品を大量生産できる効率的な加工方法です。しかし、このプロセスにおいて「ゲート残り」という成形不良が発生することがあります。
射出成形におけるゲート残りとは
射出成形に発生する不良の一つであるゲート残りとは、製品から切り離されるべきゲート部分が残ってしまう現象で、製品の品質や機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
ゲート残りは、製品の外観を損なうだけでなく、強度低下や機能不良を引き起こす可能性も孕んでいます。
ゲート残りが発生するプロセスとして、射出成形では、溶融したプラスチックはスプルー、ランナーと呼ばれる経路を通ってキャビティ(製品形状の空洞)に充填されます。
ゲートは、ランナーとキャビティをつなぐ最後の通路であり、製品にプラスチックを注入する役割を担います。
成形後、ゲートは製品から切り離されますが、この際にゲートの一部が製品に残ってしまうのが「ゲート残り」です。
ゲート残り発生の主な原因
ゲート残りが発生する原因として、金型面に問題がある場合と成形条件側に問題がある場合に分けられます。下記でそれぞれご紹介します。
金型側の問題
⓵不適切なゲート設計
ゲートの位置、形状、サイズが製品形状や樹脂特性に合っていない場合、ゲート残り発生のリスクが高まります。特に、ゲートが製品の目立つ場所に配置されていたり、ゲート周辺の形状が複雑だったりすると、ゲート残りが目立ちやすくなります。
②ゲートランド長の不適・ゲートエッジ部の摩耗
ピンゲートにおいて、ゲートランド部が長すぎるとゲート残りが発生しやすくなります。
金型の使用に伴い、ゲートエッジ部が摩耗して角が丸くなると、樹脂がうまく切れずにゲート残りが発生しやすくなります。
③金型のメンテナンス不足
金型に汚れや異物が付着していると、樹脂の流れが阻害され、ゲート残りにつながることがあります。冷却回路の汚れも、冷却不足によるゲート残り発生の原因となります。
成形条件側の問題
⓵不適切な射出速度と圧力
射出速度や圧力が適切でない場合、ゲートからの樹脂の流れが不安定になり、ゲート残りが発生しやすくなります。
②温度管理の不適切
金型温度や樹脂温度が適切に制御されていないと、樹脂の粘度や固化速度が変化し、ゲート残り発生の原因となります。
③冷却不足
製品が十分に冷却されないまま取り出すと、ゲート部分が完全に固化せず、ゲート残り発生のリスクが高まります。冷却時間不足は、サイクルタイムを短縮しようとする際に起こりやすい問題です。
ゲート残りの発生を対策するためには
ゲート残りを防止するために行うべき対策法をご紹介します。
金型設計の最適化
⓵ゲート位置の検討
ゲートを製品の目立たない場所、あるいは機能に影響を与えない場所に配置することで、ゲート残りの影響を最小限に抑えることができます。
②ゲート形状とサイズの改良
ゲートの形状を最適化することで、樹脂の流れをスムーズにし、ゲート残りを減少させることができます。また、ゲートサイズを小さくすることで、ゲート残りの量を減らすことができます。(但し、ゲートサイズは樹脂の種類,製品の大きさにより注意が必要)
③ゲート周辺の設計改善
ゲート周辺の形状を最適化することで、樹脂の流れを改善し、ゲート残りを減少させることができます。例えば、ピンゲートの場合、ゲートランド部を適切な形状および長さにすることで、ゲート残りを抑制することができます。
④金型のメンテナンス
定期的な金型清掃やメンテナンスを行い、ゲートエッジ部の摩耗や冷却回路の汚れを防ぐことが重要です。特に冷却回路は使用に伴い、汚れが蓄積し冷却機能が低下していくため、定期的な洗浄などのメンテナンスをする必要があります。当社では1年に1回の洗浄を推奨しています。
成形条件の最適化
⓵射出速度と圧力の調整
射出速度と圧力を適切に調整することで、ゲートからの樹脂の流れを安定させ、ゲート残りを防ぐことができます。
②温度管理の徹底
金型温度と樹脂温度を適切に管理することで、樹脂の粘度や固化速度を制御し、ゲート残りを抑制することができます。
③冷却時間の確保
製品を十分に冷却してから取り出すことで、ゲート部分が完全に固化し、ゲート残りを防ぐことができます。
当社の射出成形金型 修理・メンテナンスの3つの特徴
① 年間250台以上の実績を誇る金型メンテナンス!40名以上の熟練技術者が対応
当社は、1947年の創業以来、多くの金型を手掛けてきた実績があります。
この豊富な経験と技術を活かし、年間250台を超える金型の修理・メンテナンスを実施。新品同様に復元するだけでなく、お客様のニーズに応じた修理や改造の提案も行います。
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「金型くん!メンテ改造ラボ」では、他社や海外製の金型、さらには図面がない古い金型でも修理・メンテナンスを承ります。
部品交換や表面処理、部分修理など、お客様からの情報を基に、金型の成形効率向上をサポートします。
他社で対応困難とされた金型も、当社の実績豊富な技術者がしっかりと修理いたします。
③ 不具合の原因調査から生産性向上の提案まで一貫対応
金型は長期使用に伴い、表面の劣化や部品の摩耗で成形不良や生産効率の低下を招くことがあります。
「金型くん!メンテ改造ラボ」では、長年培った技術で金型を徹底的に分解・調査し、生産性向上を目指す修理・改造プランをご提案します。
よくご相談を頂くゲート残りに関するお問い合わせ
⓵ゲートの角度が不適切なためゲート残りが発生
ゲートの角度が不適切なためにゲート残り発生が多い場合は、ゲート部の角度を修正する必要があります。
②一部のゲート(多数個どりの場合)にのみゲート残りが発生
多数個取りの場合、一部のゲートにのみゲート残りが発生する場合は、ゲートバランスが悪いことが原因と考えられます。ランナーの幅を変えて流れを均等になるように設計調整することで改善が期待できます。
③ゲートエッジの摩耗
ゲートエッジの摩耗によるゲート残りは、基本的にレザーで修正します。ただし、摩耗が深い箇所やゲートが小さすぎる場合はレザーでの修正ができないことがあります。その場合は、ゲート径を広げる調整で問題ないか確認し、仕様上問題がなければゲート径を広げて対応いたします。
金型に発生する不具合なら、金型くん!メンテ改造ラボにご相談ください!
本記事では、射出成形金型における不良「ゲート残り」の原因と対策方法についてご紹介しました。
金型くん!メンテ改造ラボを運営する扶桑精工では、社内にて高い設計標準を設定しているため、高品質な金型製作の実現を可能にしています。
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